認知症の人とのケア物語②

センター長の石川です

M保健師が連れてきた二人の認知症の人。
Aさんはコミュニケーションがほとんど取れない方でしたが、穏やかな方でした。しかし生活上の何もかもがケアの必要な方です。

もう一人のBさんは、逆にアグレッシブな方でした。とにかく落ち着かない。
すぐに出て行こうとされるし、止めると大声を出し、そして噛みつかれます。

ここでもう一度、当時の特別養護老人ホームの状況を説明しておくと、デイやショートというサービスは、その制度そのものが、ようやく始まったばかりという状況です。

働くケアワーカーたちは、簡単なヘルパー研修を経たうえで働いていますので、今の介護福祉士のような専門的勉強と試験を受けてはいません。
いわゆるシロウト集団と言っても過言ではありません。
それはまだ駆け出しの私も同じようなものです。
まして認知症(当時は痴呆症)の症状については書かれてあっても、ケアの方法など書かれている書籍はほとんどありませんでした。

ですから全てが手探りです。

そして、施設もロックアウトするなどと言うことはなかったので、出て行こうと思えば、いくらでも出ていけたのです。
そのため、出て行く方(当時は徘徊者と呼んでいました)に対しては、一緒についていくしかなかったのです。

因みに当時の入所者へのケアは下記の写真のようなことが当たり前のように各地の施設で行われていました。
私がいた施設ではさすがにここまでのことはなかったですが、これに近いものはあったでしょう。
何をしているところかわからない人もいるかもしれません。
おむつ交換ですね。それを廊下で平気でやっていたのです。

認知症の人のケア物語2

おむつ交換が廊下で当たり前のように行われていました。
中央法規出版「認知症の人の歴史を学びませんか」宮崎和加子著より

つまり、認知症の人は特にですが、当時の老人ホームでは、人権や尊厳などなく、とにかく必要最低限のケアを行う状況です。
「めんどうみられている、面倒見たってる」という構図そのものだったのです。

さて、Aさんは私が初めて会った認知症の人ですが、今でも名前を憶えています。
やさしい笑顔を浮かべてくれる人でしたが、とにかく話が通じない。
今でこそ、認知症の人とのコミュニケーションについては色々と勉強もできますが、当時は「なんでわかれへんのや?」「それが認知症ちゃうの?」「じゃあどうして伝えるねん?」「こっちの言うことに従わせるしかないやろ」みたいな問答を職員としていたものです。
今となっては正しいとは言えない対応でしたが、とにかく私たちの誘導のままに動いてもらいました。

私たちが本当に困ったのが、アグレッシブでいつも噛みつかれたBさんへのアプローチでした。

(つづく)

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