若年性認知症の方との関り(8)【どこまで家族を苦しめるのか】

Aさんが当ホームへ来られた時、既に認知症状はかなり進行している状況でした。
コミュニケーションは既に取れず、何でも口に入れてしまい、
年齢からは想像ができないほど腰が曲がり、歩行も不安定でした。
発する言葉もほとんどが意味不明で、認知症専用フロアにおられる方の中でも、
年齢は一番若いのだけど一番年老いた感じでした。
そして排泄を含め、食事に至るまで全て要介護の状況だったのです。

このような状況になるまで、妻は仕事に行きながら、
誰の助けもない中で、ひたすら自宅でケアを行っていたのです。

私自身、認知症ケアの理念となる「パーソン・センタード・ケア」など眼中にない時代。
大変な認知症の人が入ってきたという思いもあり、
若年性認知症の方がここまでひどく進行してしまうのかと言う、半ば観察的視点はあったかもしれません。

しかしこれまでの自宅での状況を知っている私には、反面熱い思いの芽生えもあったのです。

入所してしばらくして、ひとつの問題が生じました。Aさん自身にではありません。
妻より利用料が払えないと言ってきたのです。
状況を聞くと、電気水道代等も滞納が続き、それらが止められそうなくらいひっ迫しているとのことでした。
もちろん家賃や学費もあります。
妻はAさんが在宅時はパート勤めしかできず、今もよい仕事に巡り合えていないとのことでした。
多くの滞納を抱え、施設利用料の支払いも滞ったのです。

若年性認知症の方との関り

生駒山より吹田市方面を望む

妻によると、生活保護を希望したが受け入れられないとのこと。
このまま施設利用料を滞納となると、Aさん自身も大変なことになってしまいます。
妻の疲れ切った表情に、Aさんだけのことでなく、この家族も何とか助けなければならないと思いました。
仕事の範疇など関係ありません。
私はS市の担当と掛け合いましたが色よい返事はもらえません。
高齢課と保護課のやり取りもうまくいかないようです。
私もこの当時は若かったというか、血気盛んで、なんでAさん家族を救ってやれないのだとS市と激しくやりあい、
うまくいかない状況に事務所で悔し涙を流した記憶があります。

結果、S市の担当も頑張ってくれたのでしょう。
Aさん家族の生活保護が認定され、滞納だらけの状況から脱することが出来たのです。

何度も繰り返し書きますが、現在のように様々なサービスや制度が全くない時代。
その時代にも若年性認知症の方はおられたし、そして家族も悲壮な状況の中で耐え忍んでおられたのです。

若年性認知症の方との関り

今は、地域包括支援センターがあります。ケアマネジャーもホームヘルパーもいます。
デイサービスもショートステイもあります。入居系施設も増えました。
でもどうでしょうか?若年性認知症の方の苦しみ、介護家族のつらさ、
それらのことを果たしてどれだけサポートできているのか。

あらためて、サービスありきで、大切なことへのアプローチが忘れられているのではないか。
逆に言えば、これだけの介護サービスを本当にうまく活用できているのだろうかと思うのです。

次回、Aさんのお話しの最終話です。

センター長の石川でした。