若年性認知症の方との関り(11)【女医さんの心の叫び】

Bさんが、私が生活相談員をしている認知症専門フロアに来られた時、既に認知症状が進行していました。
小さな身体の方でした。50歳代でしたが可愛らしい表情の方で、
人気の女医さんだったということがよくわかります。
開業医として、評判の良い女医さんだったのです。

ところが、もの忘れが目立つようになり、時に精神的に不安定になり、
医療器具をひっくり返して暴れることもあったそうです。
人の命を守る仕事ゆえ、家族は早々に医師の仕事を辞めさせました。

しかし、使命として医師の仕事に誇りを持っていたBさんが、
その仕事が出来なくなったことで、認知症状は一気に進行してしまったのです。

「医者の仕事を奪ってしまったことが、本人にはつらかったのでしょう。それから一気に認知症が進んでしまいました。でも人の命を預かる仕事ですから、間違いがあってはならなかったので仕方なかったのです。」
と、娘さんが寂しく語ってくれました。

若年性認知症の方との関り

施設に来られてからのBさんの表情は、いつも険しく、そして哀しい表情でした。
そして、「ワァー!」と大声で泣き叫ぶのでした。

足元が不安定なのにもがくように歩き、悲壮感あふれる泣き叫び。

その叫びは、「なんでなんで!?どうしてどうして!?」と言う、
今の自分の状況が到底受け入れられない激しい心の叫びのように思われました。

その叫び声は「こんなはずじゃない!!」と言う、
認知症の人のすさまじい訴えの声として私の心に深く残ったのでした。

センター長の石川でした。

(つづく)